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Channel: 修了生の声 –筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群 カウンセリング学位プログラム (博士前期課程)/カウンセリング科学学位プログラム (博士後期課程)
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筑波大学の社会人大学院に通う意義―修了生から,受験をお考えの皆さまへ

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この春に本学位プログラムを修了された34期修了生の仁田光彦さんより,受験に至るまでのプロセスと取り組み方,大学院での2年間の振り返り,そしていま,振り返ってみて感じられた「3つの意義」などについて,沢山の思いをお送りいただきました。受験をご検討されている方もそうでない方も,是非ともご覧いただければ幸いです。


社会人になって大学院に通うことは,どのような意義があるのでしょうか。社会人はただでさえ時間がなかなかありません。個々人で,事情は違えど,仕事,家庭,地域活動など,様々なカテゴリで多面的な役割を担っている人も多いのではないでしょうか。こうした忙しい毎日の中で,社会人として大学院に通うということには,それなりの意義があるはずと思います。今回はこうした形で機会をいただけたので,自身の体験を振り返りながら,筑波大学の社会人大学院に通う意義について考えてみたいと思います。個人の感想をベースとした内容になりますが,ご覧になっている方にとって,何かのお役に立てれば幸いです。

受験から入学まで

私は筑波大学の社会人大学院受験に一度失敗しています。最初に受験をしたのは,社会人になって,3~4年目くらいだったと思います。当時,少し仕事に慣れてきて,時間的な余裕が出てきたこともあり,漠然と大学院への進学を考えていた私は受験することにしました。大学時代,心理学科に所属していた私は,当時受験勉強をほとんど行わず,試験に臨み,結果として筆記試験で不合格になってしまいました。今考えれば無謀だったなと思いますが,一方でまずチャレンジをしたことに一定の意義があったとも感じます。この結果には少なからずショックを受け,再チャレンジも考えたのですが,それでも社会人は忙しい・・。子どもが産まれたり,仕事もだんだんと忙しくなる中で,受験失敗のショックや悔しさにはいったんフタをして,日々を過ごしていきました。

次に受験を考えたのが,社会人10年目くらいです。管理職を経験する中で,人や組織について考える機会が増えていきました。自分がこれまで社会人経験の中で培ってきたことだけでは,理解・整理しきれないようなことも増えてきて,体系的に心理学を学びたいと強く思うようになりました。1回目の受験時に産まれた子どもも小学生になるところで,少しずつ親の手から離れつつあるタイミングでもあり,家族とも相談し,受験をすることに決めました。

受験に向けては,前回の反省も生かし,半年くらい前から計画的に取り組みました。学習時に特に意識したことは“アウトプット”です。過去問を確認し,単語の説明記述や小論文を中心する試験問題だったため,言語化して実際に記述することを中心に繰り返し準備していました。頭の中で漠然と言語化することと,具体的に記述することの間には微妙に差異が生じます。私の場合は,手間や時間はかかりますが,繰り返し記述することを重視して,準備をしていたように記憶しています。

大学院生活

大学院時代の2年をまとめると,1年次は多くの授業をとりながら,網羅的・体系的に心理学を学ぶ期間,2年次はゼミでの活動を中心に自身の研究を深めていく期間だったと思います。いくつか印象的だった出来事を振り返ってみます。

まずは,入学式の時に聞いた「大学院は新しい知を創造する場」という話が印象的でした。大学院という場に通うからには,新しい知識を得ること,学ぶことももちろん重要ではあるが,社会に役立つような新たな知を創出することを意識してほしい,という話の趣旨だったと思います。大学院という場は,学ぶだけの場ではなく,「新しい知を創造する場」と認識できたことで,その後の授業に臨む姿勢も自然と変化したように思います。

1年次には色々な授業を通じて,多面的に心理学を学ぶことができました。例えば,「生涯発達心理学Ⅱ」という授業では,高齢者の方の心理について学びました。高齢者の方の心理的な問題に取り組む上では,逆に心理学だけにとらわれるのではなく,社会学や法学,医学などの様々な観点からアプローチする必要があり,人間の心理を扱う上での奥深さを実感することができました。また,「キャリア心理学」という授業では,キャリアにおける理論を学習しながら,ワークを通じて自身のキャリアを振り返る機会となりました。これまでの人生の中で,社会や地域への貢献についてほとんど携わっていなかった自分に気づかされ,その後子どもが所属するスポーツ少年団のコーチにチャレンジするきっかけをいただいたように思います。上記の授業以外のいずれの授業も個性的で充実しており,心理学についての体系的な学びが得られることはもちろんのこと,時に自分の人生を振り返り,新たなチャレンジを促してくれるような機会となり,私にとっては得がたい経験となりました。

2年次はゼミでの活動が中心となります。1年次の終わりに,自身の研究内容と希望状況を踏まえて,ゼミが決まります。私が所属していたゼミでは,膨大な先行研究の探索と先生との対話を通じて,自身の研究テーマを深掘っていきます。当初,先人達が積み上げてきた多くの研究に圧倒されながらも,少しずつ自分の研究テーマが輪郭をもって浮かび上がっていくプロセスは,非常にエキサイティングなものでした。分析結果がなかなか出ない,研究内容をうまくまとめられないなど,苦しい時期もありましたが,同級生の姿に刺激を受け,先生からの温かいご指導に支えられ,乗り越えることができ,納得のいく形で修士論文としてとりまとめることができました。

振り返ってみて

改めて,筑波大学での経験を振り返ってみると,私にとっては3つの意義がありました。1つ目は,実践に通じる学びがあったことです。心理学についての体系的な学び,研究的なアプローチを通じた深め方を学べたのはもちろんですが、日々の仕事や生活に役立つ考え方を学ぶことができ,授業で得た知識は,仕事だけでなくプライベートにおいても生かせることが多かったです。社会は人によって成り立っています。人の心理について学ぶことは,社会の真理を学ぶことに通じているように感じています。

2つ目は,研究の楽しさを再認識することができたことです。心理学の研究は,日常生活の中でなんとなく“当たり前”のように感じられていることをテーマにしている内容も多いと思います。一方で,そうした“当たり前”に感じられるテーマに着目し,研究テーマとして抽出し,その要因と結果を明らかにしていくプロセスを通じて,人や社会への理解が促進され,人間がよりよく生きることにつながる新たな知を創造することにつながるのではないかと感じます。研究プロセスを通じてそうしたことを体感でき,研究の楽しさを再認識することができました。

3つ目は,自分自身の幅を広げることができたように感じます。授業を通じて自分自身のことについて考える機会も増えたように思いますし,一緒に授業を受ける多様な同級生にいつも刺激をもらっていたように感じます。結果的に,自分の考えの幅を広げられたように感じますし,一人で学んでいたのでは,たどり着けないような視点に気づくことができました。

今後は,筑波大学での経験を生かし,研究活動を続けながら,世の中に役立つような新たな知の創造に,微力ながら取り組んでいきたいと考えています。

最後まで読んで頂きまして,ありがとうございました。今回の内容が読者の方にとって,何かしら役立つ内容になっていれば幸いです。


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